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「Meta(メタ)」へと社名変更したフェイスブックが、メタヴァースへの取り組みについてのヴィジョンを発表した。

フェイスブックという企業はスキャンダルの渦中にあるといえるが、いま世間の関心を「未来」へと向けようとしている。具体的に言えば、これまで以上に存在感のあるFacebookを中心とした未来だ。

毎年恒例の開発者会議「Facebook Connect」で10月28日(米国時間)、最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグとReality Labs部門の責任者であるアンドリュー・ボスワースが、メタヴァースに関する幅広いヴィジョンについて発表した。

次の時代に向けた動きのひとつとしてフェイスブックは、仮想現実(VR)の「Oculus VR」と拡張現実(AR)の「Spark AR」といったプラットフォームのアップデートも明らかにしている。これはフェイスブックが提供するメタヴァースのために、より多くのアプリケーションや機能を開発するようデヴェロッパーに働きかける取り組みの一環だ。さらにザッカーバーグは社名を「Meta(メタ)」に変更することも発表し、仮想世界に関する将来のヴィジョンについても強調した。

 

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フェイスブックが「メタ」へと社名変更しても、本質的に“変わらない”こと

 

「次世代の(インターネットの)プラットフォームとメディアは、より没入感のあるものになるでしょう。まるで体験そのものに入り込んでいるような身体との一体感のあるインターネット環境になっていくのです。ただ眺めているだけではありません」と、ザッカーバーグはオンラインでのプレゼンテーションで語っている。

さらに、メタヴァースでは人々が友人や家族と一緒になって仕事をしたり、学んだり、買い物をしたり、遊んだりできるようになるとザッカーバーグは言う。すでにノートPCやスマートフォンのような2Dの平面ディスプレイでも可能ではあるが、フェイスブック(メタ)が提示するメタヴァースのヴィジョンは、いまの体験を超えるようなものになる。

メタヴァースの構築はフェイスブックにとって、わたしたちのオンラインでの関心を何年にもわたって獲得するための次の一手にすぎない。だが、フェイスブックに批判的な人々にしてみれば、インターネットの次の大きな局面において「Facebook」が“代名詞”になることほどは憂慮すべきものではないかもしれない。

 

フェイスブックがメタヴァースの世界における存在感を主張することは、インターネットの次の段階がどれだけオープンなものになるのかという疑問にもつながってくる。フェイスブックはアップルのようなほかのテック企業のクローズドなエコシステムを非難する一方で、自社のVR機器「Oculus」だけに限定された体験を提供し続けているからだ。

VIDEO BY META

フェイスブックが考える仮想世界

ザッカーバーグやボスワースをはじめとするFacebook Reality Labsの幹部たちは、アプリのプラットフォームからハンドジェスチャー技術、VRヘッドセットやARグラスのプロトタイプまで、さまざまな要素を紹介しながらメタヴァースの緩やかなヴィジョンを示していった。

具体的には、フェイスブックが8月にデモを実施したZoomのVR版ともいえる「Horizon Workrooms」の拡張、VRヘッドセット「Oculus Quest」の「Home」のソーシャルなヴァージョン、Oculus Questのフィットネス機能の強化、仮想環境における非3Dアプリのサポートなどが挙げられる。なかでも2Dアプリのサポートは注目に値するが、これらのアプリが広く利用されるようになるまでは、どれだけ便利なものかはわからない。

だが、これは遠隔地にいる仲間との共同作業のためにVRヘッドセットを装着していても、Slack(サボっているときならInstagram)をチェックするためにヘッドセットを外す必要はない、という発想の機能だ。これらのアプリは仮想環境内の2Dのディスプレイのように動作する。

 

また今回のプレゼンテーションでは、フェイスブックが開発してきたARメガネ「Project Aria」についても少し説明があった(これは動画を撮影できるレイバンのサングラスとは別の製品である)。このARメガネは今回のイヴェントで一瞬だけ登場したが、ハードウェアの詳細はほとんど語られていない。代わりに来年はより多くのアプリ開発者を呼び込むために、「Spark AR」と呼ばれるARソフトウェアプラットフォームのアップデートを進めていることが明らかにされた。

ARソフトウェアのアップデートのひとつとして、「ポケモンGO」のようなゲームやテーマパークでの宝探しや記念碑のガイドツアーなど、「公共空間における位置ベースの体験」が可能になるようだ。また開発者は、高度な深度マッピングやオクルージョン(手前にある物体が背後にある物体を隠す現象)処理を利用することで、現実世界に配置できる仮想オブジェクトをアプリに組み込めるようになる。

 

大げさに語られている可能性はともかくとして、これらの技術開発は人々が物理的な環境でヴァーチャルなアイテムに触れたときに、それをリアルに感じさせることを目的としている。

さらにフェイスブックは、没入型アプリを開発するデヴェロッパーに1億5,000万ドル(約170億円)を提供すると発表した。これは決して小さな額ではないが、同社が2021年にReality Labs部門に投じる予定の100億ドル(約1兆1,360億円)とは比べものにならない。

“メタ”という言葉の意味

SFの世界で生まれた「メタヴァース」という言葉は、いまや現実のコンピューターの世界にまで進出している。最近になって重要なキーワードになっており、世界最大規模のテック企業からゲームメーカー、そしてテック業界で影響力をもつ“声の大きい”人々が、この「モバイルインターネットの後継者」について語っている(もちろん中小の企業も、この流れに乗っている)。

 

メタヴァースはデジタル体験のレイヤーであると考えられており、シームレスで終わりのないヴァーチャル世界を生み出すことになる。

ザッカーバーグは以前、メタヴァースの重要な要素は「プレゼンス」であると語っていた。Zoom会議では必ずしも体験できないようなかたちで、仮想環境で友人と一緒にいるように感じられるというのだ。彼はこれを「身体化されたインターネット(embodied internet)」とも表現している。

拡張現実(現実世界の上にデジタルのレイヤーを重ねる)や仮想現実(完全に没入できるコンピューティング環境)という概念は、ずっと前から存在している。この分野は近年は「XR」と呼ばれており、複合現実(mixed reality)や拡張現実(extended reality)、相互現実(cross reality)といった意味をもつ。

 

だが、ザッカーバーグやテクノロジーの専門家たちは、メタヴァースはARやVRだけではないと主張している。XRはメタヴァースの一部であるが、“メタ”という言葉は現在のインターネットの限界を超えることを意味している。一部の人はそれを「ユビキタス・コンピューティング」と表現し、常に存在しながらも背景に溶け込んでいるような世界だと言う。

異なるメタヴァースの定義

メタヴァースがどうあるべきかについては、人によって考え方が少しずつ異なっている。

フェイスブックはコンピューターを顔に付けたままでも人と人とのつながりを深められる手段であると強調するが、ゲームの世界との結びつきを重視する人々もいる。ナイアンティックのCEOのジョン・ハンケは、現実の生活を拡張するためではなく、現実の生活からの逃避のためにテクノロジーを使えば、恐ろしいディストピアになると警告している。

また、フェイスブック(メタ)やマイクロソフト、グーグル、アップル、エピックゲームズ、Unity Labs、Robloxといった多くの企業が、この“未成熟なインターネット”のためにアプリや体験を構築している。この「モバイルインターネットの後継」が、どれだけオープンで相互運用できるものになるかも、まだわからない。

ちなみに現在のモバイルインターネットは、主にふたつのOSで構成されている。過去10年にわたって何十億人もの消費者が、こうした規格に沿ったかたちのアプリケーションを経由してインターネットを体験してきたのだ。

相互運用性が課題に

今回のカンファレンスの基調講演では、Oculus Quest 2専用の機能やゲームが紹介されたが、これらの体験を通じてフェイスブックは、メタヴァースを「オープンな体験」として売り込んでいる。 例えば、中世を舞台とする戦闘ゲーム「Blade and Sorcery」はVRヘッドセット専用になる。また「Horizon Workrooms」や「Horizon Home」の一部の体験もそうだ。

 

今週初めに実施されたジャーナリスト向けのブリーフィングで、ザッカーバーグとボスワースは、フェイスブック製ではないVRヘッドセットでもソーシャルVRサーヴィス「Facebook Horizon」を利用できるか何度も尋ねられていた。ボズワースは、メタヴァースでは相互運用性が最優先事項であり、それは「メタヴァースの基本的な前提条件のひとつ」であると語っている。だが、のちにFacebook Horizonは現時点で、ほかのVRヘッドセットでは動作しないことを認めていた。